尊敬する人を基準に、「しなくては」で一日を決めていた
以前は、価値観をどのように捉えていましたか?
私は、それまで価値観について深く考え、言葉にしたことがありませんでした。考えるとしても、尊敬する人を思い浮かべて、「その人のようになるために、これをしなくては」と決めるような捉え方でした。
自分が心から望む方向というより、何かを達成したり、最後までやり切ったりすることが中心でした。それが価値観なのだと思っていました。
そのころ、毎日をどのように感じていましたか?
毎日は、何となく過ぎていました。日々の予定をこなしてはいても、自分はどんな気持ちで過ごしたいのか、身近な人とどんな時間を持ちたいのかを、立ち止まって考えてはいませんでした。
家族と過ごす時間も日常の一部になり、何を伝えたいかを意識しないまま、その時間が終わることがありました。
「これでいいのかな」──借り物の価値観を見直したきっかけ
書くことには、以前からどのような関心がありましたか?
以前からジャーナリングには興味があり、気分やその日の状態を書いたこともありました。ただ、記録するだけで何が変わるのかは、よく分かっていませんでした。ノートを用意しても、書くことが自分の行動とどうつながるのかが見えていませんでした。
ACTジャーナリングに取り組み始めたときも、最初は、何かを達成することや最後まで終えることを価値観として置きました。
最初に置いた価値観を、なぜ考え直したのですか?
書いてみると、「これでいいのかな」という感覚がありました。自分が本当に望んでいる方向と、少し違うように感じたのです。
そこで、学ぶ場で質問し、話を聞きながら考え直しました。尊敬する人を基準に「しなくては」と決めるのではなく、自分の内側から大切にしたい方向を探してみようと思いました。
自分の内側から、大切にしたい方向を言葉にする
考え直す中で、どのような方向が見えてきましたか?
私が大切にしたいと思ったのは、自分の気持ちや身の回りの空間を、すっきりした状態にして過ごすことでした。達成して終わりにする目標というより、その日をどのように過ごしたいかという方向です。
誰かの姿をそのまま目指すのではなく、自分にとって心地よい状態を言葉にしたことで、日常の行動を考えやすくなりました。
その方向を、どのような行動にしましたか?
片づけや掃除など、身の回りを整える行動を置きました。大きな目標を一度に終わらせるのではなく、その日にできることを考えました。
書いておくと、ただ「きれいにしなくては」と考えるよりも、自分がどのような状態で過ごしたいから整えるのかを思い出せました。
家族との何気ない時間に、伝えたい言葉を置く
家族との時間について、どんなことを書きましたか?
家族と過ごすとき、自分がどんな気持ちでいたいか、どんな言葉を伝えたいかを書きました。「おかえり」「お疲れさま」「頑張ったね」といった言葉を、どんな表情で伝えたいかも考えました。
何気ない声かけですが、先に書いておくと、その時間を当たり前のものとして流さず、自分が選びたい言葉を思い出せました。
大切な話をするときには、書くことをどう使いましたか?
家族と大切な話をする前には、自分が伝えたいことだけでなく、相手の気持ちも忘れないように書きました。
話しているうちに自分の考えだけへ寄ってしまわないよう、先に言葉にしておく。書いたことは、どんな姿勢で話したいかへ戻るための手掛かりになりました。
くじけそうな場面を予想し、小さく始めて戻る
行動するのが難しそうなとき、どのような準備をしましたか?
家事や仕事を始めようとしても、面倒に感じたり、別の出来事が起きたりすると、止まってしまうことがありました。そこで、どんな場面でくじけそうかを先に考えました。
そのうえで、できる範囲の小さな行動を置きました。最初から全部を終えようとせず、まず始められるところを選びました。それでも、思ったとおりにできない日はありました。
書くことを休んだ時期は、どのように受け止めましたか?
取り組みが終わったあと、書くことを休んだ時期がありました。その後、もう一度書き始めると、書いていたときと、書いていなかったときの違いに気づきました。
ずっと途切れずに続けることだけを目指すのではなく、休んだあとにも戻ってくる。これからも書くことを続け、やりたいことが見つかったときに、軽やかな気持ちで挑戦したいと思っています。
自分の価値観がしっくりこない人へ
価値観を考えても、しっくりこない人へ伝えたいことはありますか?
私も最初は、尊敬する人のようになるために「しなくてはならないこと」を価値観だと思っていました。実際に書いてみて違和感があったからこそ、質問し、考え直すことができました。
最初に置いた言葉を正解にしなくても、自分が本当に大切にしたい方向を探し直せます。書くことを休んだとしても、また始められます。私にとっては、そのように問い直しながら続けることが、自分の価値観へ近づく道になりました。