「私が正しい」をゆるめたら、相手が事情を話し始めた──提案を押し付ける関係から、話し合える関係へ

鍼灸師のあきこさんは、勉強と経験を重ね、自分の提案に自信を持って仕事をしてきました。その分、相手が提案を受け入れないと、「こんなに良いと思うことなのに、なぜ?」と、その一点が気になることがあったといいます。

自分が苦しいという自覚からではなく、心についてもっと学びたいという関心から、考えを書いて振り返り始めました。

書く面白さに触れ、ほかの人の考え方を知るうちに、「私の正しさだけが答えではない」と感じるようになったあきこさん。相手の事情を聞いて提案を考え直し、職場での接し方も変わっていった経験をお聞きしました。

Before

  • 自分が良いと思う提案には、相手も従うべきだと考えていた
  • 提案に従わないことばかりが気になり、相手の事情が見えにくくなっていた
  • スタッフからすぐ返事がないと、何度も呼びかけたり探しに行ったりしていた
  • 一人のスタッフとの緊張が、職場全体にも広がっていた

After

  • 自分の正しさだけでなく、相手にも考え方や選択があると受け止められるようになった
  • 相手が事情を話してくれるようになり、次の提案を相談しやすくなった
  • 返事にこだわって呼び続けることをやめ、相手なりの仕事の進め方を見られるようになった
  • 職場の張り詰めた空気が和らぎ、それぞれが仕事を進めやすくなったと感じている

Contents

目次

  1. 良い提案のはずなのに、従わないことばかりが気になっていた頃
  2. 心をもっと学びたい──考えを書き出し始めたきっかけ
  3. 相手にも考え方や選択があると、気づけるようになった
  4. 相手が事情を話し始め、職場の張り詰めた空気も和らいだ
  5. 一人がけの椅子から、みんなで座れる場所へ
  6. 自分の正しさに、強くこだわっている人へ

Trust

運営代表 / インタビュアープロフィール

運営代表:佐藤舞(サトマイ)

佐藤舞(サトマイ)プロフィール写真

合同会社デルタクリエイト代表社員 / 桜花学園大学客員教授
科学的な脳トレ「CBTジム®」を主宰。過去2600人に提供。
企業のマーケティングリサーチや需要予測などを行いながら、ビジネス統計学の専門家として、地上波テレビ・ラジオ、新聞、雑誌、経済メディアを通して、情報発信を行う。
上場企業の社外取締役も務める。

インタビュアー:さき

小柳出紗季 プロフィール写真

CBTジム®運営スタッフ / CBTジム®勉強会講師 / CBT実践歴6年
完璧主義によって仕事が思うようにパフォーマンスを発揮できなかったところから、CBTを通じて仕事の生産性が上がっただけでなく、自分や家族、仲間を大切にしながら、価値観にそって仕事に取り組めるようになった。

良い提案のはずなのに、従わないことばかりが気になっていた頃

以前は、自分の提案を受け入れない相手をどう見ていましたか?

自分なりに勉強や経験を重ねてきたので、「この提案には、こんなに良いところがあるのに」と思うことがありました。相手が従わないと、そのこと自体に気持ちがざわついていました。

「どうすれば従ってもらえるだろう?」と、そればかり考えてしまう。相手への見方が狭くなっていたと思います。

スタッフとのやり取りでは、どうでしたか?

呼びかけた時にすぐ返事がないと、返事をしないことに気を取られていました。「来てください」と言っても返事がなければ、何度も呼び、探しに行くくらい、自分が言ったことにこだわっていたんです。

私が一人のスタッフとピリピリした関係になると、周りも緊張して、何も言えないような雰囲気になったことがありました。

心をもっと学びたい──考えを書き出し始めたきっかけ

当時、自分の考え方を変えたいと思っていたのですか?

正直に言うと、その頃は生きづらさを感じていたわけではありません。勉強と経験を積み重ねて、自分の考え方や仕事のやり方を作ってきましたし、その積み重ねが悪かったとは思っていません。

ただ、今は、相手に伝える時に、自分の正しさだけが唯一の答えではないと分かってきました。

始めるきっかけは、何だったのでしょうか?

自分の勉強の中で、心理は面白い分野だと思っていました。心についてもっと学ぶにも、いろいろな学び方があるんだなと。その中で、考え方を振り返る方法が目に入り、「面白そうだな」と興味を持ちました。

初めは心について勉強したかったのですが、実際に取り組むと、書いて言葉にすること自体の面白さに気づきました。決まった型に沿って書くと、頭の中で一緒になっていた考えを、一つずつ分けられました。書いてみると、そこからまた考えが進むんですね。

相手にも考え方や選択があると、気づけるようになった

相手が提案を受け入れない時、どんな見方ができるようになりましたか?

「今回は、私の提案を選ばないんだな」と思えるようになりました。自分が勧めたことでも、選ぶかどうかはその人が決めることなんですよね。

以前から、相手の選択を考慮しようとはしていました。でも、「自分が正しい」「従わないともったいない」という気持ちが強くなると、ほかが見えにくくなっていたんです。

今は、「私はこうするべきだと思っているな」と気づいたら、いったんその考えを脇に置くようにしています。相手が選んだことを受け止めて、次にどうしようかと考えやすくなりました。

ほかの人の考え方に触れて、気づいたことはありますか?

ほかの方のワークを読むと、「こんなことでも気持ちがざわつくんだ」と気づきます。ちょっとしたことが、考えるのを止めてしまう理由になることもあるんですね。

私は、目標があれば最短の道を進めばいいと思いがちでした。でも、書かれた言葉を読むことで、自分にはなかった考え方や、心の動きが見えてきました。「そういう考えもあるんだ」と思うことが増えました。

相手が事情を話し始め、職場の張り詰めた空気も和らいだ

患者さんとの会話は、どう変わりましたか?

相手の選択に対して、私が「それもそうか」と思っていると、相手も、もう少し先の事情を話してくださるようになりました。

以前は、私の提案に従えないから何も言えない、と感じさせていたのかもしれません。今は、私を怖がるような感じが減って、「実はいろいろな事情があるんです」と話してくださいます。

事情を聞けると、「それなら、こういう提案はどうだろう?」と考えられます。私の提案に従ってもらうことばかり考えていた時より、話し合いを進めやすくなったと思います。

スタッフへの接し方も変えましたか?

返事をしない人に「返事をして」と言い続けても、それだけでは変わりませんでした。返事の有無だけにこだわるより、その人なりに仕事が回っているところを見るようになりました。

何度も呼び続けたり、探しに行ったりすることをやめてみたら、それでも仕事は回っていました。「返事がないと成り立たない」と思っていたけれど、そうでもなかった。そこは大きな気づきでした。

周りの雰囲気には、どんな違いを感じましたか?

私のこだわりが緩むと、スタッフもホッとしたように感じました。ある一人のスタッフが自分の指示に従わないことに注目していた時は、ほかのみんなも緊張していたんです。

私が「そういう人もいるよね」と受け止めるようになると、ほかのスタッフも、その人の返事の有無にこだわりすぎずに接するようになりました。その人とのやり取りで職場全体が緊張することが減り、それぞれが仕事を進めやすくなったと感じています。

一人がけの椅子から、みんなで座れる場所へ

これから、どんなことを大切にしたいですか?

言葉にする力を、これからも伸ばしていきたいです。言葉にすることは、人を理解する楽しさにも、自分自身を理解することにもつながると感じています。

以前は、「私は正しい」という一人がけの椅子に、ずっと座っていたような気がします。それはそれでやりがいがあり、向かう道も決まっていました。

今は、ほかの人にも、それぞれの正しさや選択があると見えてきました。大きなクッションにみんなで座って、快適な場所を作るようなイメージです。その感覚が楽しいので、これからも大切にしていきたいです。

自分の正しさに、強くこだわっている人へ

過去の自分に、今ならどんな言葉をかけますか?

「あなたの正しさだけではなく、世界にはいろいろな考えがあるんだよ」と伝えたいです。

それを知るために、ほかの人が書いたものを読んだり、自分自身の考えと向き合ったりしてみたらどうかなと。私は、その面白さを知れたことが良かったと思っています。

CBTジム®で、自分の正しさへのこだわりに気づき、相手の選択を考える

CBTジム®では、とっさに浮かぶ考えや感情を書き出し、思い込みや決めつけに気づくワークを通じて、日常の行動選択を見直していきます。

自分の提案を受け入れてもらえず苛立ってしまう方も、「自分が正しい」という考えをいったん脇に置き、相手の事情や選択を確かめながら、次の提案を考えてみませんか。

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